作家インタビュー イアン・ヘイデン(パート1 日本語)

2016.11.02

30年以上日本に住み、現在ウッドターニング(木工旋盤)作家として活躍するイアン・ヘイデンさん。
日光にある工房を訪ね、取材しました。
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○プロのウッドターニング作家になろうとしたきっかけを教えて下さい
→最初は趣味で小さな作品を作るだけでしたが、その後ウッドターニング用の機械を購入し、よりクリエイティブな作品を作るようになりました。今から数年前に私の作品をみた作家の友人達が益子の陶器市に出てみないかと誘ってくれたのをきっかけに、プロとしてやっていくかどうかを意識しました。

○陶器市に参加してみて、どうでしたか?
直接お客様から色々な感想を聞くことができた良い機会でもあり、またプロとしてやっていこうと決心したターニングポイントにもなりました。
今から6年位前、陶器市では小物や箱の木工作品はありましたが、ウッドターニング製品は殆どなく、珍しかったのです。お客様は皆、作品を手に取り木の感触を味わい、気持ちが良いと言ってくれました。そうした感想を直接聞くことで、人は木の自然のぬくもりが好きなのだとあらためて感じました。
また、益子の陶器市で忘れられない体験をしました。私の作品を最初に買ってくれた女性がこう言ってくれたのです。私の作ったサラダボウルを抱いて「これは私の宝物です」だと。私は、自分が手がけたものによって人が喜んでくれた、そのことに大変感動しました。この達成感は計り知れなく、お金では得られない何ともいえない満足感がありました。

○日本で活動しようと思ったのはなぜですか?
→日本は私のホームです。30年以上夫婦で暮らしています。日本に住む多くの外国人は4〜5年しか住まず、仕事の契約期間や子供の教育等を理由に帰国する人達が多いです。しかし我々は二人とも日本が大好きで、また仕事をもっていたので、この国を離れる理由がありませんでした。私達にとって日本に住むことは自然なことなのです。
また、日本は木工作品について潜在的な市場があると思います。もちろん陶磁器の方が人気はありますが、木はユニークで、陶磁器とはまた違ったビジネスチャンスがあると捉えています。それから日本には素晴らしい木材が沢山ある

○工房について聞かせてください。ヘイデンさんは日光と東京、2箇所に工房を持っていますが、それぞれどのような作業をしているのでしょうか?
→私は使う木材のほとんどを山形と栃木県から仕入れ、日光の工房に保管しています。そしてそれぞれの木材を見てどんなものを作るかイメージし、適当なサイズにカットしたものを東京の工房へ運びます。妻は平日都内で仕事をしているので、私も平日は東京の工房で作業します。そして週末は二人で日光の別荘・工房で過ごしています。

○ヘイデンさんご自身は自分の作品の特徴はどんなところにあると思いますか?
→できるだけシンプルで自然なかたち、そしてそれぞれの木目の美しさを生かしていることが私の作品の特徴だと思います。
私の役目は、それぞれの木片の中の美しさを引き出し、人々の生活に使える物に「変える」ことだと思っています。
陶器とは少し違うかもしれませんね。陶器はどちらかというと何かを「加える」作業です。土を練り、成型し、釉薬をかけるなど、手作業が加わります。一方ウッドターニングは、ある意味ではその反対、といえます。木を切る、削るなどの「引き算」の作業をして食器等に形を変えます。だからこそ私は、木目の美しさ、質感、様々な色合いが際立つよう、あまり手をかけ過ぎないように心がけています。

○ヘイデンさんの良い所は日本的なセンスと外国人としての自由なセンスの両方を持っていることだと思います。実際、ヘイデンさんの作品は日本の器とも大変合わせやすいと思います。
→あるお客様から、私の日本的なセンスが好きだと言われたことがあります。
もちろん私は日本人ではありませんが、それでも私の作る作品の中に、なんらかの日本的なセンスを感じてくれたのだと思います。
私の作品は、「ハイブリッド」でユニークスタイル、とも言えるかもしれませんね。

○ヘイデンさんはどなたにも師事されず独学で技術を習得されたそうですが、技術的な疑問に直面したときにはどのように解決していったのですか?
→ウッドターニングの専門雑誌を沢山読んだり、YouTubeで沢山のビデオを見たりして学びました。
これらの情報は便利とても役に立ちます。

○今後はどんなことにチャレンジしていきたいですか?
→シンプルなカーヴィングに興味があります。
また違う木材を組み合わせたような作品も面白いのではと思っています。
そして作品をつくるうえで、無駄な材を出来るだけ出さないような作品づくりをしていきたいです。

今日は長い時間、ありがとうございました!
ヘイデンさんは11/3(木)~11/7(月)益子秋の陶器市に今年も出展されます!
是非、ご覧下さい

 

<工房での様子>

赤門が美しい、日光の別荘・工房
日光の工房がある別荘。目をひく赤門
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門から家までのアプローチが美しい。愛犬ミックと。
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工房の中の様子。沢山の木材が所狭しと置かれている
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外にも出番を待つさまざまな木材が
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まずは小さなブロックにカット
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コンパスで印を付けます
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機械でカットしていきます
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機械を作動させ、道具を使い削っていきます
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荒削りから徐々に細かい作業に
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さまざまな種類のターニングツールを使います

*ウッドターニングとは・・・高速で回転させた木材に刃物をあてて削り作品を作る木工のジャンルのひとつです。
ウッドターニングをする上で木材を回転させるための機械のことを木工旋盤といいます。
仕組みが陶芸で使う轆轤(ろくろ)と同じこともあり、木工ろくろという呼ばれることもあります。

イアン・ヘイデン プロフィール
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1982年 ロンドン大学で地質学を学ぶ
1986年 奨学金を得、九州大学大学院課程にて研究
2010年 ウッドターニング(木工旋盤)を使用した創作活動を始める
益子陶器市をはじめ、鹿沼や高崎のグループ展・個展に出展。
2015年には日光東照宮400年式年大祭用に木皿を奉納する。