作家インタビュー 湯浅 机上工芸舎(パート1 日本語)
2018.04.08
千葉県船橋市で机上工芸舎を主宰する湯浅記央さんを訪ね、お話をうかがいました。
⚪︎工芸に興味を持ったきっかけを教えてください
工芸には実はそんなに興味があったタイプではなく、小さい頃から金属が好きでした。ピカピ カするものはなんでも良かったわけではなく、金属光沢が好きでした。
⚪︎子供時代から今につながるような土台はどこで作られたのでしょうか?
美術は好きでしたが、仕事にしようとは考えていませんでしたね。ただ、中学時代の美術の先 生が少し変わったタイプの先生で。一生懸命やったとかではなく、出来上がりの良し悪しで評 価する先生で、それは面白くて影響はあったかなと思います。高校卒業前にアルバイトして10万円くらいお金を貯めて、卒業後は進学も就職もせず、1年 くらい自転車で北海道を一人で路上生活をしながら回っていた時期があります。 その旅の途中で金属のことを勉強したいと思うようになりました。
⚪︎何かきっかけになるようなことがあったのですか?
北海道を中心に回っていたのですが、あるとき本屋で立ち読みをしていたら、真鍮の棒で小さ な自転車を作っている人が載っていたのです。こういうことをやっている人がいるんだなぁと 思って、それがきっかけでいろいろ考えるようになり、やはり勉強がしたいなと思ったのです 。 劇的な出会いというわけでなく、強いて言えば、なのですが。ただ、北海道を回った経験は 色々な大人に出会って影響が大きかったとおもいます。
⚪︎作品のラインナップについて教えてください
最初から作っているのはカトラリーです。日常の中に置いてもらいたい、という気持ちがあっ て、日常生活の中で一番身近な金属といったら、カトラリーなんじゃないかと思って始めまし た。日常の中に置いてもらいたい、という気持ちは今も同じです。 でもすぐには売れなかったです。
⚪︎どうして売れないんだろう?という壁はなかったですか?
最初は売れませんでしたが、悩みはしなかったです。まだ高いのかな、という意識はありまし た。道具なので使ってもらわないと意味がないので、研究して値段を抑えて作りました。これ は質もいいし、相場から見てもすごく安いのに、、、でも売れませんでしたね。道具を作るこ との難しさというものを勉強していた時期だったと思います。
⚪︎カトラリーの後、どういった経緯からフライパンなど作るようになったのですか?
生活の中に差し込んでいくようなイメージなので、これも普段の生活の中で自然に入っていけ るものなのかなと思って作っているものです。別に新しく何かを作った、という感じでもない です。
⚪︎ステンレスの食器皿も作っていますね。バリエーションは増えていきますか?
増えていくと思います。金属のお皿はメインのプレートというよりも、アクセントに向くとか んがえていますので、形やサイズなど、考えながら作っています。
⚪︎今後はどういったものに力を入れていきたいですか?
ステンレスですね。金工作品に抵抗がある人にとって、とっつきにくかった「メンテナンスの 難しさ」を取り払って、使ってみたいな、と思ってもらえるような、きっかけになるようなも のが出来たらな、と思います。
⚪︎最後に自分の作品はどうあってほしい、と思いますか?
買った後からもっと良くなるものになるように、いつも心がけています 買った時がベストなのではなく、買った時からその人にとって価値が上がっていけるものを意 識しています。大切なものになる、という意味もありますし、質感的に美しくなる、というこ ともあります。 その方がすごく使ってくれて、そのものの価値が上がれば嬉しいです。 例えば本来はカトラリーでも、全く違う用途として使われたとして「これがすごく良いんだ よ」となれば、それでも良いと思います。 ある意味では材料の可能性を奪ってものを作っているので、そういう意味でも「価値を上げる ということはすごく意識しますね。
サンプルの小さいお皿で作業工程を見せていただきました
鉄板から形を切り出し、成形していきます
鍛造という手法で、金属をハンマー等で叩いて圧力を加え、金属内部の空隙を潰し結晶を微細化、結晶の方向を整えて強度を高めると共に目的の形状に成形していきます。
今回は簡易的な小型バーナーで焼き入れの工程を見せていただきました
中火くらいで煙があがるまで熱を入れていきます
オリーブオイル等の植物油を塗布します
さらに火にかけ煙があがるまで熱を入れていきます
表面の色が変化していくのがわかります
何度か繰り返すと・・・
①食用油が焼きつき②酸化重合し③食用油が酸化重合し
見慣れたフライパンの黒い色になります
もうすぐ益子春の陶器市。湯浅さんも机上工芸舎として今年も参加されます。
是非お立ち寄りください!
第101回益子春の陶器市2018年4月28日(土)~5月6日(日)